高知から世界を目指す!医療とテクノロジーの懸け橋になる新しい産学連携のオープンイノベーション拠点施設「MEDi」が目指すものとは

産学官の枠組みを超え、医療・ヘルスケアにおける地域貢献と研究開発の一大拠点を目指す高知で新しく立ち上がった「オープンイノベーション拠点 MEDi」について高知大学医学部長 菅沼先生にお話を伺いました。

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「MEDi」立ち上げのきっかけとは

――なぜ高知で「医療×テクノロジー」の拠点を作ろうと思ったのですか?

菅沼先生:以前、カリフォルニア州立大学サンディエゴ校の研修に呼ばれていったことがありました。

サンディエゴでは産学連携のプロジェクトが盛んに行われているようで、色んな所で産学連携についての話が出てくるんです。

スポンサーの企業もついており、大学の先生達が機密保持契約や共同研究契約とかを「前提にしない」で話の出来る環境がありました。

「これなら~できますよ」とか「こんな分野に強い人います?」「いますよ」みたいな話をしていて、「これならいけそうだ!」となって初めて契約を進めるんです。

それを見て「あ、これを高知で作りたいな」って思ったのが一番初めのきっかけでしたね。

――なるほど。オープンな環境だったんですね。

菅沼先生:そう!すごくオープン(笑)

あと高知大学と高知工科大学では、医工連携を一緒にやってきた歴史があります。

その中で僕達が共同研究をしていて感じたのは、医療研究をやってる人と工学研究をしている人とは専門分野の違いからお互いの話が分からないことが多いってこと。

このお互いわからない状況をどう繋ぐかが課題でもありました。

――実際どうされたのですか?

菅沼先生:医学部の中には診療放射線技師とか臨床工学技士という人達がいます。

要は医療機器を日常的に使っている、医療機器のテクノロジーについてもかなり深くわかっていますよって人がいるんですよね。

「その人達が医療と工学の通訳になれるんじゃないの?」と思いまして。

その人が色んな知識をしっかり系統的に身に着けたら、両者の懸け橋になり中心になって医工連携のプロジェクトを走らせられるかもしれないと考えたんです。

そういう人材を作ろうってことで高知大学医学部に今年の2021年4月に「ヘルスケアイノベーションコース」を新設した経緯があります。

――すごいです。県外でこのような取り組みを行っている大学はあるのでしょうか?

菅沼先生:形は色々あるかもしれないけど、工学部に作っていることが多く、医学部の中に作ったのは日本で高知大学がはじめてです。

今までなかった「医療×テクノロジー」の相談窓口

――「MEDi」とはどういう所なのでしょうか?

菅沼先生:簡単に言えば、医療とテクノロジーを使って「事業をしたい」「研修をしたい」「連携できないか」などの相談窓口です。

例えば、学生じゃない一般の方が何かを学びたい時に、大学でも一般の人が講義を受けられる仕組みはあります。

でも学生が沢山いて尚且つ専門性の高い科目に一般人が聴講生として参加しても、ついて来られない事がよくあるんですよね。

何せ一般向けに切り分けたような内容じゃありませんから。

そこにもし彼らの質問を上手に引き出せる人がいたら?

「ここが知りたい」「ここはどうなってるんですか?」と聞ける場があったらいいと思いませんか?

――確かにあったらいいと思いますね。

菅沼先生:事業者や研究者でも、教授にアポを取ってやり取りすることは凄くハードルが高くて大変しんどいことなんですよ。

もし「あれやこれやが聞きたい」ってやって来ても相手が適切に答えられる人じゃなかったらお互い理解できないなんて事になってしまって無駄骨になるかもしれない。

そのような事が無いように、事前に質問や情報の相談ができるワンストップの窓口が必要なんです。

まずは私たちに相談して、「どういう支援がほしいのか」「ただ知識を学びたいだけなのか」それに適した情報や人をこちらが提示する。

――今現在、「MEDi」はどういった活動をされていますか?

菅沼先生:MEDiでは、ヘルスケアイノベーション、医療×VR学の取り組みを推進しています。

医工連携の先進的な取り組みや地域との連携などを高知県立大学、高知工科大学、高知高専をはじめ、スタンフォード大学、北陸先端科学大学院大学などの先生方との作戦会議を繰り返しています。

東京に本拠地を置くベンチャー企業も複数ご参加頂いていて、それが呼び水となって、他県からの見学要請、支援依頼も来ています。

既に、医学部教員のと開発マッチングをした案件も出てきています。

「MEDi」が目指す未来と今

――コミュニティとしての活動をオンライン化することで全国の参加者が集まって来ているのですね。

今後の活動について何か決まっていることはありますか?

菅沼先生:いろいろ考えてはいるのですが、私自身で今決めているのはこれから三か月ほど室戸で暮らそうと思っています。

――室戸!?それはどうしてですか?

菅沼先生:室戸には今まで急性期医療の病院があったんですけど、それが無くなってしまいました。

室戸で救急車が呼ばれたときに連れていく病院が室戸市内にはないという状況です。

――確かに以前、室戸病院が無くなったっていうニュースがありましたね。

菅沼先生:そうなんです。僕はそこから一番近い救急病院に一か月に一回泊まり込みで行ってるんですけど、必ず室戸救急から患者が来ます。

僕達の医学部から室戸に人を送ってあげられると一番良いのですが、何より人が足りていない。

――つまり、そもそも人的リソースという課題がということですか?

菅沼先生:はいその通りです。

ただ、リソースの問題ではなく仕組みを変えることで何かできるんじゃないか、とも思っています。

実は今、医学部に「室戸をどうにかしたい」と考えている室戸出身の医者がいます。

「はたまるねっと」という地域包括ケアシステムのICTの仕組みはその彼が作りました。

「はたまるねっと」の仕組みというのは複数の医療施設、調剤薬局、介護事業所等を相互に繋ぐ医療情報ネットワークです。

それをいま四万十市や宿毛市の幡多エリアで展開し、民間の病院等と一緒にやっています。

そしてそこから得られた情報が高知大学のサーバーに蓄積されているんです。

専門医がサポートできる環境をまさに今、作っているところですね。

――地域包括ケアシステムのロールモデルになる気がします。
高知大学におけるデジタル化の歴史というのはどれぐらいあるんでしょうか?

菅沼先生:うちの大学の附属病院が出来てから43年ほど経ってるのですが、その歴史の中で医学部付属病院が動き出してから殆ど電子カルテ情報でやっています。

一番最初は電子カルテではなく、オーダリングシステムというものでした。

「この検査をオーダーしましたよ」「結果はこうですよ」というような電子情報をずっと残してきてたんです。

うちの大学はそういう電子化をずっと続けてきたわけです。

あと、高知には南海トラフの問題がありますよね。

震災の際に、電子化が進んでいて「私は~さんですよ」という情報がクラウドにあり、健康状態やらどこの病院に行っていたとかっていう必要なデータが取り出せるわけです。

そういう大きな災害に見舞われても今までのデータをもとに他の病院にかかってもすぐに立ち直れるのは凄く重要になってくると思います。

――なるほど確かにその通りです。そして「MEDi」はそうした医療のイノベーションをサポートしていくHubであり拠点となるわけですね。

菅沼先生:そういうのがあった方がいいじゃないかって思うんですよね。

そこから集まったデータを活用することで、より良い医療機器や治療法の研究にも活かせられますから。

私たちの「MEDi」で世の中の医療と社会がもっとより良いものになっていくと思っています。

ーーありがとうございます。
最後に、MEDiに興味を持っていただいている方に一言お願いします。

菅沼先生:まさにこれからMEDiとしての活動や実態をつくっていくところです。

まずは気軽にご相談いただけるような体制づくりを進めていて、近々ホームページも公開する予定です。

課題先進県である高知だからこそ、医療とテクノロジーで何かをしてみたい、という方にはぜひご相談をいただければと思います。

――MEDiをHubにすることで、高知と医療とテクノロジーに関する関係人口が増えていく期待ができますね。
本日はお話ありがとうございました!

<現在のお問い合わせ先>
高知大学医学部オープンイノベーション拠点 MEDi
担当:井上
E-Mail : jm-chikainoue@kochi-u.ac.jp

 

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ライターの感想
課題先進県だからこそ取り組む価値がある「医療とデジタルの領域」 MEDiが目指すところは壮大でありながらも、高知ないしは日本にとっても大変意義のあることだとワクワクしました。 中身の実装はこれからが本番とのことですので、今後も取り組み内容に注目していきたいと思います!
この記事を書いた人
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やまやん

東京出身。高知に移住してきました。 不動産営業を経験し、2018年8月より株式会社SHIFT PLUSでキャリアアドバイザーとして転職相談、求人開拓などの営業をしています。 BUNTANでは、取材・カメラ・ライティングを担当。 「この企業・求人について詳しく知りたい!」という方は気軽にお問い合わせください。 WEBでの面談も可能です。 趣味はカメラとウイスキー。2児のパパ。
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