子どもをわざわざ高知の山の中の学校に通わせるために、全国から移住!子どもが主役の「とさ自由学校」とは?

高知駅から車で45分の場所に、大自然に囲まれた小学校、「とさ自由学校」があります。

「とさ自由学校」は、2019年4月に新しく開校された小学校ですが、いわゆる一般的な小学校とは大きく違う魅力的な部分がたくさんあります。

その魅力を、「とさ自由学校」で先生として働いている、難波さんにお聞きしました。

”学び”を子どもたちが考える”子供が主役の学校”

ーー「とさ自由学校」ってどんなところですか?

難波さん:「とさ自由学校」は、一言で言うと、”子どもたちが主役の学校”です。

ーー子どもが主役の学校?

難波さん:はい。一般的な学校での学習スタイルは、教科書などを使って、子どもたちに知識を順序立てて教えていくものだと思うんですが、「とさ自由学校」では、”何を学ぶのか”はもちろんのこと、”それをどうやって学ぶのか、どうして学びたいのか”といったことまでも、大人たちがサポートをしながら、考え、学んでもらっています。

ーー学ぶことを子ども自身が決める!

難波さん:そうです。個人の学習だけでなく、学校のルール(校則)や、年間のイベントなども、子どもたちが中心になって決めています。大人が指示をするのではなく、子どもの意志に大人が寄り添うスタイルですね。

具体的には、よく子どもたちに「今日はどうしたい?」と質問をします。子どもたちが何を考えて、どんな性格で、どんな好みで、どんな興味があるのか。そういった個性をとても大事にしているんです。その中で、子どもたちが、”こんなことをしてみたい、あんな風にしてみたい、今日はやらない、今日はやる”といったことを聞き出し、決定してもらっています。

ーーやる、やらないも自分で決定するんですか?!

難波さん:そうですね、”やらない”もしっかり聞くようにしています。やらならいを選択をしたときに、どんな状況が生まれるのかっていうのは、子どもたちの想像力では補えないこともあるので、「これを今日やらなかったら、こういうことになる可能性があるけど、それでもいいの?」という話をよくします。自己決定をした先に、何があるのか。そういった話をよくして、決定してもらいます。

体験学習を中心とした学び

ーーすごい!とても新しい考え方。先生が、一方的に「教える」のではなく、あくまでも学ぶのは子どもたち自身ってことですね。

難波さん:そうなんです。「とさ自由学校」が大事にしていることが三つあって、まずは「一人ひとり個性を尊重する」。「自分の意思で行動を決定する」。そしてそれらを促すために、座学ではなくて「体験学習」を中心に学ぶ、としています。

ーー「体験学習」での学び?

難波さん:そうです。例えば、先ほども言ったように、一般的な小学校では、教科書を使って学習していきます。でも、「とさ自由学校」では、文字情報で知識を詰め込むのではなく、「体験」を通じた「学び」を習得してもらいます。

ーー言葉では理解しましたが、実際は難しそうです。

難波さん:例えばですが、先日、一から火を起こしてみようとなったんです。

じゃあ、火を起こすには何がいるか。木がいるよねと。で、ちょうど裏山で林業をしている人がいたので、その方にお話をして、「木が欲しい」ということを伝える。コミュニケーションをとって、話す・聞く・伝えるなどの”国語”を学ぶ。

でも、実際その木を燃やそうとしても、燃えないんですよ。木を乾燥させてないから。なんで乾燥させないといけないかっていうと、木は乾燥させないと、水分を含んでいるから燃えないんだっていうことを知る。なんで木は水を含んでるのかっていうと、木は地面の水を吸い上げて育ってるからだよーっていう、自然の原理、つまり”理科”を学びます。

ーーなるほど、実際の体験から、学びへと結びつけていくんですね。

難波さん:そうなんです、学びは無限なんです。ちなみに、起こした火を通じて、料理をすれば”家庭科”になりますし、火を燃やすには、木が何個いるのか、何センチくらいの木がいいのかを考えることで”算数”になる。また、火を通じた昔の人々の暮らしを考えることで”社会”になります。

このように、「体験」が先にあって、そこから生じた行動や疑問などを、大人たちと一緒に学んでいきます。教科書も使いますが、あくまでも学びを補うために使用しますね。

一家で高知へ移住し、入学する方も!

ーーとっても画期的です。ちなみに、どのような方々がこの学校に入っているんですか。

難波さん:実は、全国から「子どもの教育」への関心が高い方々が、ご家族で高知へ移住されて入学されたりといったケースもあるんですよ。移住された方の中には、畑を借りて、子どもたちを送った後に畑仕事をして、田舎暮らしを楽しんでおられるようですよ。

ーー高知へ移住!

難波さん:はい。そういう動きからみても、今、お子さんの「個性」を伸ばしてあげたいと考えている方々が多いように感じています。全ての科目で平均60点を目指す教育ではなく、得意不得意は一人ひとり違っていていい。「とさ自由学校」では、好きなこと・興味があることを伸ばしてあげたいと思っています。

実際に、カエルが大好きで、カエルをずっと見ている子もいれば、図工室にずっとこもって作っている子、手芸が好きでずっと糸を持っている子、パソコンにハマってパワーポイントで資料を作っている子、トランポリンにハマっている子など様々です。

好きなことを伸ばしていくことの方が、きっと子どもたちにとって幸せな生き方につながるのではないかと思っています。

面白そうだから参加したい、キャンプファイヤー方式!?

難波さん:私たち大人が意識し、大切にしていることは、「学ばせる」ことではなく、子どもたち自身が「学びたくなる」ように工夫をすることです。
それを”キャンプファイヤー形式”って呼んでるんですけど、本来、楽しそうであれば、何故か自然と参加してしまうものだと思うんです。

例えば、キャンプファイヤーをやっていたとします。でも、参加しない子も出てくる。その時に、参加しない子を無理矢理誘うんじゃなくて、キャンプファイヤーに参加してくれてる子たちと、キャンプファイヤーを楽しく盛り上げる。

そうすると、参加していなかった子どもたちも、「何がそんなに楽しいのかな?何をやってるのかな?」って覗いてみたくなる。
何を強制されるわけでもなくて、面白そうだから自然と人が集まってくる。そんなイメージです。

ーーその他に、「とさ自由学校」の特徴ってありますか?

難波さん:色々ありますが、「とさ自由会議」も特徴の一つだと思います。
子どもから大人までが全員で話し合って、学校のルールであったり、運営方法について決めていきます。大人が一方的に決めることはありません。

子どもの時から自分たちで話し合って、意思決定をすることの大切さ。自分が一員となり、目標達成のために役割分担をして、物事を進めていくことの重要さを学びます。

他には、「アート」「ミュージック」「スポーツ」の頭文字をとった「アムス」という活動をとおして、自分を表現する活動を行ったり、普段食べている「ごはん」がどのような思いで作られているのかを学ぶために、田植えや稲刈り、収穫まで行ったりします。
また、「とさ自由学校」では、グローバル教育を目指していて、1年生から英語教育を行っています。

その他、火の起こし方やテントの貼り方、薪の調達の仕方などを学んで、”サバイバルマスター”になるといったプログラムもあります。サバイバルマスターのスキルを何個習得できたら、サバイバルマスターの表彰状を渡して、キャンプに行くっていう計画もしていますね。

ーー生きる力が身に尽きますね!私自身も通ってみたくなりました!(笑)

ちなみに、入学に感心がある子どもたちに向けて、8月にサマーキャンプを実施するんですよ。

ーー8月にサマーキャンプ!

3泊4日のサマーキャンプを通して、「とさ自由学校」の風土を実際に体験してもらうのが狙いです。野外炊飯や川遊び、キャンプファイヤーも実施しますよ。「とさ自由学校」の子どもたちも、今から楽しみにしてくれています。

2020年のサマーキャンプにご興味のある人はこちらから

ーー難波さん自身、この一年やってみてどうですか?

子どもたちの成長に、日々驚かされていていますね。

先日の出来事ですが、ついさっきまで遊んでいた子が、急に溝の水が気になったみたいなんですよ。そしたら、近くにいた子どもたちに声をかけて「俺、こっちを掃除するから、そっち手伝って!」「OK!わかった!こっちを掃除するね!」って。
さっきまで別々に遊んでいたのに、言葉を通じて協力体制が生まれて、自分たちで掃除をするっていうコミュニティを創り出してるわけなんですよ。そういうことが出来るのは本当にすごいなと。

子どもたちを日々見ているからこそ、子供たちの可能性は無限大だと常々感じます。そういう姿を見守りながら、僕ら自身も子どもたちと一緒に日々学ばせてもらっています。

ーーなるほど、本当に素敵な学校ですね!今後の活動もとても楽しみです!

ありがとうございます!

 

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ライターの感想
高知ならではの自然の豊かさを利用した学びのスタイルで、子どもたちの個性を重視し、可能性をサポートしてくれる「とさ自由学校」さんに驚き!大人の私でさえも通いたくなる仕組みがたくさん。こんな学校だったら毎日が刺激的で、休みの日でさえも、早く学校に行きたくなるだろうなと思いました。
この記事を書いた人
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芳村 百里香

奈良県生駒郡出身。京都の大学に通う中で知った”本場高知のよさこい”に魅せられ、2012年に高知市に“よさこい移住”としてIターン。単身地方移住の経験から地方創生や地方コミュニティに関心を寄せている。高知愛を綴るべく「高知移住ブログ」を発信しながらライターとしても活動中。 高知移住ブログも連載中。
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